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Archive for the ‘USAB – USA Men’s National Team’ Category

[USAB] バスケアメリカ代表の再建

今バスケ日本代表はFIBAワールドカップ予選の真っただ中。アメリカ大陸でもそろそろ予選が始まるころだが、2012年オリンピックで優勝したアメリカ代表(USAB)は2014年ワールドカップの出場権を獲得しているため、この夏に予選を戦う必要もない。

そんな中でもつい先日次世代のアメリカ代表を担う若いNBA(大学生も少数)選手たちを30名程度集めたMini-Campが行われた。

そのMini-campの総括のようなかたちでNBA.comに以下のような記事が掲載されていた。

With talent pipeline full, USA Basketball turnaround is complete

アメリカ代表チームDirectorのJerry Colangeloを中心として、どのようにチームを再建してきたかという点について書かれている。それを要約してみたい。

■背景

NBA選手を擁したにも関わらず、2002年の世界選手権の6位、2004年アテネオリンピックの3位、2006年世界選手権の3位と、ヨーロッパやアルゼンチン・プエルトリコ等の台頭によりもはやアメリカは勝てない相手ではないという認識が広まっていた時期に、立て直しの切り札としてDirectorに就任したのがColangeloだった。

当時過酷なシーズンを戦った後の貴重なオフである夏の期間を代表活動に充てる選手はなかなかおらず、タレントは集められず毎回異なるメンバーで継続性にも乏しかった。その結果が10代から同じメンバーで活動してきたアルゼンチンへの敗北など、上記の結果につながっているといわれている。

■再建の第1歩:コーチKの登用とKobe、LeBronの参加確約

2005年にColangeloが就任したときには再建のために必要なことは何でもやる権限を与えられた。そして最初の仕事としてColangeloはヘッドコーチ(HC)としてNBAのHCではなく、Duke大のCoach K(Mike Krzyzewsk。マイク・シャシェフスキー)を指名した。

次にKobe、LeBronを口説いた。伏線としてKobeはNBA入りしていなければCoach KのDuke大に行っていた可能性があり、2004年にはLakersのHC打診をしていたこともあり、既にCoack Kとは関係が築けていたことがある。

Magic JohnsonとLarry BirdがDream Teamに参加することで他の選手が参加すると決めたように、KobeとLeBronがUSABに参加することは他のスター選手たちを参加させるために必要なことだった。Coach KとColangeloはKobeやLeBronのアドバイスをあおぐというかたちで、トップダウンではなくパートナーとして2人の選手との関係を構築しようとし、それが2人の参加を決意させた。それによって2008年の北京オリンピックでWade、Anthony、Kiddという面々が参加することになった。

チームではKobeは例によって一人黙々と練習をし他の選手とも積極的に交流しなかったのだが、LeBronがKiddたちを全面に出してチームをリードさせつつ、必要な場面でKobeをチームの輪に入れメンバーたちをまとめていたという。

# 余談ではあるが、Coach Kが就任して最初の世界大会は2006年世界選手権(日本で開催)だった。準決勝でギリシャに負けたのだが試合ではパパルーカスとスコルツァニーティスのピックアンドロールをアメリカ代表は全く止められず敗北した。ちょうど観戦していたのだが名前も聞いたことのないギリシャの選手がアメリカの守備を切り裂いて得点していたのは結構衝撃的だった・・・。

Coach Kも2006年の敗北から、メンバーさえ集まれば勝てるということはなく常にチームとしてよくなることの必要性を感じていた。そのために選手の決定は選考委員を都度設けるのではなくColangeloからの招待制とし、選手たちにはKobe、LeBronたちスター選手とプレーできることの価値を説くとともに、数年間のコミットが必要なことも説いた。

記事冒頭には今回のMinicamp参加選手たちのコメントがあるが、選手たちはみな選ばれたことを栄誉と考えるし、何よりも早くそのチームでプレイしたいと述べている。これこそがCoach KとColangeloが望んでいた状況だ。

選手たちのUSABに対するマインドを変えることができ、USABに対するRespectを取り戻したこと。これがまず第1のステップだった。

■Nikeとの関係改善とビジネス面での再建

世知辛い話だが、選手は無給とはいえ選手を集めて、スタッフを集めて合宿を行い強化するにはお金が必要だ。

USABはそれまでNikeと契約していたのだが(※)現在のPrimary SponserであるNikeとは2004年のアテネオリンピックで関係が微妙になっていた。というのは2004年のアテネオリンピックにはNikeが巨額投資をしていたLeBronが出場していたのだが、当時19歳だったこともありほとんどプレイタイムを与えられることはなかった。これによって難しくなっていたNikeとの関係を修復するのがColangeloの仕事だった。

幸いColangeloはこれまでの経験(Arizonaでの野球チームのGM)でNikeのPhil Knightらの幹部とも交流があった。個人的なつながりを生かして”NBA”ではなく”USAB”という別のチーム(=ブランド)と契約する体裁を明確にし、結果として2004年以前の4年間で$9million(約9億円)だったものを2008年までの4年間で$33million(約33億円)まで増額した。(2004年以前は$9millionでは費用が足りずNBAが補てんしていた) さらに2012年までの4年間では$35millionを契約し、これにより下の年代の代表を強化するための費用もねん出できた。

またNikeをPrimary Sponsorとして維持することができたため、それをテコに他のスポンサーを呼び込むことができた。記事の中で触れられているだけでも24 Hour Fitness, American Express, Burger King, Cisco, Dr. Pepper Snapple Group, Gatorade, Jeep, Las Vegas Events, MetroPCS and Right Guard、そしてTiffanyがある。さらにまだいくつか交渉中のものもあるという。

■選手層の充実と下の年代の代表強化

USABが招待した選手のみで構成された2008年の北京オリンピックのあとは、Colangeloは選手のPipeline(補給線)の構築に着手した。U-19世代から始めて8~10年程度国際試合に出てくる選手を確保したいと考えた。選手は当該期間の全ての大会に出れなくても少なくともオリンピック1回と世界選手権1回に出ることを要望している。理想的なローテーションとしては前回の国際大会から半数(6名)、新しく選ばれるメンバーが半数(6名)程度とのこと。

現時点では2012オリンピックメンバー以外に2010世界選手権に出たメンバー(Curry、Love、Rose)、そして出ることが確実視されていたGriffinやHowardに加え、今回のMini-Campの30名がPipelineに加わった形になる。

さらにU-19についても継続性を意識した強化を行い始めた。フル代表と同様、スピードを選手層の厚さを活かしたスタイルのバスケをし、コーチについても継続して指導できるような環境を整えることで、U-19代表で活躍した選手が将来的にフル代表でも活躍しやすいようにしている。

ジュニアからフル代表まで同様のスタイルのバスケをするエリート選手が最低50名程度いる。そのいずれの選手もアメリカを代表することに誇りを持ち、コミットできることを楽しみにしている。まさにアメリカのバスケ大国の復活といえるだろう。

■Colangeloの成し遂げたこと

以上で要約終了。以下は著者の考え。

Colangeloが2005年に就任してから成し遂げたことを並べると

  • アメリカ代表に貢献できることの意義を認識させ、選手が喜んで貢献できる状況にマインドセットを変えさせた
  • 充実した選手層とその補給線を確保した
  • 強化のためにやりたいことができるだけの財政的余裕(お金)を手に入れた

ということがあげられる。

強化と財政再建という両面を一人で行うというのは稀有な存在といえるし、そんなことをできる人は世の中にそういない。

ただ何よりも “the architect of the American basketball renaissance”と書かれているように全体の設計図を描き、その実現に向けて8年の長きにわたって率いてきた、それこそがアメリカ代表を再建させるために必要なことだったのだと思う。

また記事を読んで感じるのは、ヘッドコーチだけでできることは多くないということ。Coach Kも2006年世界選手権では負けている。Coach Kと二人三脚でColangeloがサポートしながらやってきたからこそ再建を成し遂げられた。強化というのは継続的かつ我慢強さが求められる取り組みだし、多くの国のように負けたからといって頻繁にHCを変更しても実を結ばないものなのだろう。

※ 元記事では2004年以前にnikeと契約していたとは書いておらず、文脈から勘違いして読み取っていたため修正しました。@gobluetree629 さんにご指摘いただきました。

[USAB] NBAとUSAオリンピック代表チームの協力関係

オリンピック関連でもう一つ。今度はバスケットボールネタ。

アメリカは1992年のDreamteam以来、NBA選手で構成されたアメリカ代表チームをオリンピックに送り込んでいます → USA Men’s National Team

それについて考察してみたいと思います。(ネタ元はNBA、アメリカ代表の公式サイトとTwitterだけであり、それ以上のところは筆者の想像によるものです)

USAB(アメリカ代表チーム)とNBAの協力関係

今はちょうど準備段階で何試合か親善試合をしている段階です。2年前の世界選手権のときの印象はあまりないのですが、今回はNBAのホームページからUSAB(アメリカ代表チーム)のHPへのリンクが張られたり、NBA.tvでハイライトを流したりと非常に協力的な印象です。また選手も積極的に#USAB2012 というハッシュタグをつけてtwitterに投稿していますね。

#USAB2012(Twitter)

通常オリンピックチームは報酬もなく、けがをするリスクもあるためNBA側(特にチーム)としてはこれまではあまり協力的じゃなかった印象があります。それに比べると今年はNBA側としては選手を送り出すからには徹底的にそれを活用してやろうという意図が見えるようです。

オリンピック期間に入ってしまうと放映等の権利はもろもろオリンピック委員会が独占的に使うことになるので、準備段階でできるだけNBAとしてもバックアップし、かつ選手が出ている試合・練習を積極的に流すことで露出をアップしています。

NBAがアメリカ代表チームをバックアップしている理由は?

◆オフシーズンにもトッププレイヤーの試合を見る機会

6月中旬にNBA Finalが終わった後はNBAはSeason Offに入ります。その間Summer Leagueや移籍市場がありますが、トッププレイヤーたちは新しいシーズンのキャンプまでは通常オフで試合に出ることがありません。それがオールスター以上の豪華な布陣での試合を見ることができるのです。

例年で考えたらシーズンが終わってオフに寂しい思いをしているファンたちにはもう一回オールスターのようなお祭りが来たようなもの。この機会を使わない手はないですね。

◆Global展開の一部として

また昨今加速しているGlobal展開の一部とも考えられます。オリンピック期間に入ってしまえば確かにNBAのリーグとしての放映はできません。ですが、NBAも国際化し多くの海外の選手がNBAで活躍している。今回の各国代表選手にも現役NBA選手や、将来のNBA選手が多数います。

オリンピック準備期間を通してのアメリカ代表チームへファンの関心アップ
→ ファンがオリンピックを観戦する
→ ファンがアメリカ以外のチームでの現役・将来のNBA選手を発見
→ その選手がNBAに来たら試合観戦

という流れでさらにNBAを観戦に行く動機が増える機会となりえます。

以上のように考えるとオリンピックにNBA選手を派遣しているのはNBAにとっても実においしい機会といえます。リスクをとっているのだからその見返りを求めるのは当然ともいえるのかもしれませんが、したたかだなぁと改めて思います。

準備期間中に試合、NBA.tv、グッズ等の売上はUSABとNBAと各チーム間でどのように分配しているのかわかりませんが、3者とも納得するスキームをおそらくNBAは作れるということが、今のNBAのリーグとしての強さの一つなのでしょう。