アーカイブ

Archive for the ‘Owned Media’ Category

[NBA] NBAのメディア記事のクオリティとライターの関係

すごく単純化してしまうとNBAというスポーツビジネスは試合もしくはその周辺で起こっている出来事というコンテンツを、アリーナやテレビや動画配信や新聞・雑誌・ブログなどの記事を通じて届けるビジネスだ。

その観点からいうと新聞・雑誌・ブログなどで記事を書いてくれるライターは、届けるコンテンツの質・量を左右するとても重要な要素だ。NBAがそこにどのように取り組んでいるかを見ていきたい。

■NBA.com(公式サイト)で配信している記事

  • HANG TIME BLOG:試合に関するもの中心
  • ALL BALL BLOG:サイドストーリー中心
  • Ten Before Tip:試合開始直前の速報(選手の出場情報等)Daily Zap(振り返り?)
  • CharlesBarkley.com: 元選手スーパースターだったチャールズ・バークレーの試合前のコメント動画
  • Mikefratello.com:元ヘッドコーチのマイク・フラテロの記事
  • NBA Stats Featured Article:NBA Stats(試合のスタッツ)を利用した特集記事

一番充実しているのはHANG TIME BLOGである。Sekou Smithという一人の看板ライターを中心に全部で6名のライターが入れ替わり立ち代わり記事を書いている。またHANG TIME BLOGにの中にあるBLOG TABLEというコーナーでは、1つのテーマに対して比較的短文でそれぞれのライターが意見を投稿している。

※余談だがHANG TIME BLOG、ALL BALL BLOG、Ten Before TipはWordpressで作られているようだ。

これだけの記事を公式サイトNBA.comで配信している。元々アクセス数が多いNBA.comというメディアに掲載されるというのは、ライターにとってもメリットの大きい話だと思う。

一方で公式サイトに掲載するには記事の質を担保する必要がある。ここは確かではないが、HANG TIME BLOGでは6名というグループで記事を書くことにより、お互いを刺激し合って高めているのはないかと思う。また全て署名記事なので質が低ければすぐにリアクションが返ってくるというのもよい記事を書くプレッシャーになっていると考えられる。

■それだけの記事を作るためにNBAが提供しているもの

NBAは試合会場での記者席の提供、試合後のミックスゾーン(?)での取材の許可、試合前後のロッカールームでの取材の許可、試合後のPress Conferenceをライターに提供している形となる。またおそらく試合動画の提供なども行っているはず。

■取材環境と媒体がそろえばよいのか?

ではリーグが取材の環境や記事を掲載する媒体を提供すればそれで記事の質も量も増え、記事を書きたいというライターが増えるのか?

記事の量が増えて、ライターの数が増えるというのは結局は記事を書くことで食えるかどうかにかかっている。記事を提供するメディアがないと食っていけないが、記事を提供するライターがある程度の数がいないとメディアが成立しない。にわとりたまごの関係にある。

また記事の質については一朝一夕には上がったりしない。試合に関する深い洞察はバスケットボールの知識と各チームがおかれた状況や戦力の分析が必須だ。読みたくなるようなサイドストーリーはライターと記事の対象となる選手の関係の深さが影響していると考える。これらは一朝一夕には培えない。

※日本語で読める記事で非常に質が高く続けて読みたくなるのは元アイシンの佐古賢一さんが書いている「カットインNBA」と宮地陽子さん(@yokomiyaji)がNumberやSportivaに書いている記事だけ。

また質の高い記事を読んでくれる目の肥えた読者も必要だろう。

結局記事を提供する側も読む側も一朝一夕には育たないため、文化とでもいうのか時間をかけて育てていく必要がある。

■余談

とはいえ日本での記事の質は決して高いとはいえない。宮地陽子さん(@yokomiyaji)にライターのための研修会など開いてもらえるとなぁ。

[NBA] NBAでのコメンテーターの役割

スポーツが産業として栄えていくには競技に直接関係のある部分(試合、チケット、会場、チア等のエンターテイメント)以外にも、周辺(というと語弊があるかもしれませんが)の産業が栄えていくことが重要だと考えています。たとえばグッズ販売、雑誌や試合以外のニュースなどのメディア、データ提供などなど。

その中でNBAがよくできているなぁと感じることの一つがNBA.comにおけるコメンテーターの充実ぶりです。今日はその点について書いてみます。

■NBA公式サイトでのコメンテーターの出演

Barkley on Team USA

上のリンクはNBA選手で構成されたオリンピックのアメリカ代表チームについてのコメント。コメントしているのは初代Dreamteamのメンバーでもあるスーパースター、Charles Barkley。現役時代から辛口で有名でしたが、現役引退後も特技(?)を生かしてこのような仕事についています。

Barkleyは一例ですが、SHAQやKenny SmithらそうそうたるメンバーがNBA.comでコメンテーターとしてビデオ出演をしています。彼らが選手時代の経験を生かして試合や選手に関しての深い洞察を提供しています。

■元選手のNBA.comへのコメンテーター出演によりNBAが提供するもの

ファンもより深くバスケを理解することができ、興味も深まります。ファンとしては好きな選手やチームに関して詳しいと思われたいでしょうからね。もちろん私も(笑)。

コアなファンの知的好奇心を見たすこともできますし、比較的新しいファンがよりバスケを理解し、好きになるための機会を提供しているともいえます。こういう努力が地味なファン層の拡大に貢献していると思います。

■元選手のNBA.comへのコメンテーター出演によりNBAが得るもの

もちろん選手にはタダで出演してもらっているわけではないでしょう。NBAとしてはある程度の報酬はコメンテーターに払っているでしょうが、

コメンテーターの出演によってビデオコンテンツが増える
→ ビデオの再生回数が増えれば広告表示される機会が増える(広告枠が増える)
→ 広告スポンサー獲得につながる

ということで報酬分はある程度回収していると思われます。(自社でNBA.comというメディアを持っていることの強みを活かしているともいえます)

■NBAが成功している要因は?

実際にコメンテーターの出演しているビデオの広告表示(インプレッション)データはありません。ですが上記のBarkleyのビデオが6000view程度、同じページに表示されている他のBarkleyのビデオも最低4000view程度は獲得しているようです。

これを見る限り

1. Barkleyのコメンテーターとしての価値(ソフトの価値)
2. Barkleyの価値を金銭化する仕組み(=NBA.comというすでにある程度の効果が期待できるメディア)

がそろっていることが成功の要因と考えられます。

2.については本記事の話題とするコメンテーター以外の要因も考えられるため、ここでは1.価値の高いコメンテーターを番組に登用するという方向について少し考えてみたいと思います。

スポーツリーグ・チームのアドバンテージは選手がそのままセカンドキャリアでコメンテーターとしても活躍する可能性があるということです。やっぱり選手がいうことは説得力あると感じてしまいますし。実際に現役時代から知性的、分析的な選手も一定の人数いるはず。(Jリーグでいうとツネ様とかでしょうか)

それを選手の個性ととらえて、現役時代からファンにアピールしておくというのは一つの方法です。ヒーローインタビューに登場することは少ないかもしれませんが、自チームのメディアや雑誌のインタビューに積極的に出させることでセカンドキャリアとしてスムーズにスタートし、最初から人気のある(価値のある)コメンテーターとして活躍できる可能性が広がります。

実際Barkleyは現役時代からインタビューではかなり毒舌だったという印象ですが、その中にはやはりきらりと光る”眼”というのがあったのだと思います。

■まとめ

今回はコメンテーターという役割を題材に書きましたが、これは論評・分析を提供する雑誌等でも同じことがいえるでしょう。論評・分析を提供する人(=ソフト)の価値およびそれを金銭化する仕組みをつくることで周辺の産業としても発展が期待できます。

とくにスポーツでは選手を使うことでソフトの価値アップの面でのアドバンテージがあります。選手が現役時代から分析力・説明する能力の高い人を見極めて育成していくのが将来的なメディア産業の発展に貢献すると考えます。