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Archive for 2013年6月

[NBA] NBA選手によるスポンサーTwitterアカウント乗っ取り

NBA Finalの真っ最中だがちょうどGame4を見ているときに面白い取り組みを見つけた。

それがこれ↓

I’m taking over @sprint during the#NBAFINALS game tonight. Check it out starting at 9 EST. Follow @sprint & use#KLoveTakeover

Kevin Loveというオールスター選手が、NBAのリーグスポンサーであるSprint(ソフトバンクが買収しようとした会社)のTwitterアカウントを乗っ取り(Takeover)、試合の解説を流すというもの。

Sprintのアカウントを乗っ取った時の様子はこれ↓。

Hey guys, Kevin here. Ready to tweet this game live. #klovetakeover https://vine.co/v/blPDDEdLelB 

約1時間半に渡って試合の様子をツイートしたり、名前がLoveだけにスポンサーのCMをしたり↓

Sponsor love: Sprint is offering $100 off Kevin’s favorite phone, the HTC One http://bit.ly/11RrpRS  #KLoveTakeover pic.twitter.com/5cmO5orvBC

している。

■Twitter乗っ取りの効果

現時点(6/18)時点の各アカウントのフォロワー数は以下の通り。

  • @kevinlove – 約66万
  • @nba – 約737万
  • @sprint – 約15万

イベント実施時のフォロワー数ではないので正確ではないが、簡単に言うと@kevinloveの66万人(+@nbaがリツイートしているので737万)のうちのある程度の数のフォロワーが、一時的にでも@sprintをフォローする可能性がある。@sprintだけではとても集まらないほどの数のツイッターアカウントへの露出が見込める。また2ツイートのみだったがCMを出すこともできた。

もちろん選手のツイート力(話力?)あってのものだが、比較的容易にNBA(とその選手)としてのメディア価値を、スポンサーに提供できている例と考えられる。ただ選手がスポンサーの名前や商品をつぶやくのではなく、試合(しかもNBA Final!)についてつぶやくというキラーコンテンツを軸にフォロワーへの露出を行うというのは、簡単ではあるが工夫をしていると感じた。

[NBA] NBAのメディア記事のクオリティとライターの関係

すごく単純化してしまうとNBAというスポーツビジネスは試合もしくはその周辺で起こっている出来事というコンテンツを、アリーナやテレビや動画配信や新聞・雑誌・ブログなどの記事を通じて届けるビジネスだ。

その観点からいうと新聞・雑誌・ブログなどで記事を書いてくれるライターは、届けるコンテンツの質・量を左右するとても重要な要素だ。NBAがそこにどのように取り組んでいるかを見ていきたい。

■NBA.com(公式サイト)で配信している記事

  • HANG TIME BLOG:試合に関するもの中心
  • ALL BALL BLOG:サイドストーリー中心
  • Ten Before Tip:試合開始直前の速報(選手の出場情報等)Daily Zap(振り返り?)
  • CharlesBarkley.com: 元選手スーパースターだったチャールズ・バークレーの試合前のコメント動画
  • Mikefratello.com:元ヘッドコーチのマイク・フラテロの記事
  • NBA Stats Featured Article:NBA Stats(試合のスタッツ)を利用した特集記事

一番充実しているのはHANG TIME BLOGである。Sekou Smithという一人の看板ライターを中心に全部で6名のライターが入れ替わり立ち代わり記事を書いている。またHANG TIME BLOGにの中にあるBLOG TABLEというコーナーでは、1つのテーマに対して比較的短文でそれぞれのライターが意見を投稿している。

※余談だがHANG TIME BLOG、ALL BALL BLOG、Ten Before TipはWordpressで作られているようだ。

これだけの記事を公式サイトNBA.comで配信している。元々アクセス数が多いNBA.comというメディアに掲載されるというのは、ライターにとってもメリットの大きい話だと思う。

一方で公式サイトに掲載するには記事の質を担保する必要がある。ここは確かではないが、HANG TIME BLOGでは6名というグループで記事を書くことにより、お互いを刺激し合って高めているのはないかと思う。また全て署名記事なので質が低ければすぐにリアクションが返ってくるというのもよい記事を書くプレッシャーになっていると考えられる。

■それだけの記事を作るためにNBAが提供しているもの

NBAは試合会場での記者席の提供、試合後のミックスゾーン(?)での取材の許可、試合前後のロッカールームでの取材の許可、試合後のPress Conferenceをライターに提供している形となる。またおそらく試合動画の提供なども行っているはず。

■取材環境と媒体がそろえばよいのか?

ではリーグが取材の環境や記事を掲載する媒体を提供すればそれで記事の質も量も増え、記事を書きたいというライターが増えるのか?

記事の量が増えて、ライターの数が増えるというのは結局は記事を書くことで食えるかどうかにかかっている。記事を提供するメディアがないと食っていけないが、記事を提供するライターがある程度の数がいないとメディアが成立しない。にわとりたまごの関係にある。

また記事の質については一朝一夕には上がったりしない。試合に関する深い洞察はバスケットボールの知識と各チームがおかれた状況や戦力の分析が必須だ。読みたくなるようなサイドストーリーはライターと記事の対象となる選手の関係の深さが影響していると考える。これらは一朝一夕には培えない。

※日本語で読める記事で非常に質が高く続けて読みたくなるのは元アイシンの佐古賢一さんが書いている「カットインNBA」と宮地陽子さん(@yokomiyaji)がNumberやSportivaに書いている記事だけ。

また質の高い記事を読んでくれる目の肥えた読者も必要だろう。

結局記事を提供する側も読む側も一朝一夕には育たないため、文化とでもいうのか時間をかけて育てていく必要がある。

■余談

とはいえ日本での記事の質は決して高いとはいえない。宮地陽子さん(@yokomiyaji)にライターのための研修会など開いてもらえるとなぁ。

[NBA] NBAのオンライングッズ販売 – NBAStore.com

今回はNBAのグッズ販売戦略を取り上げてみたい。

一般的にはスポーツ球団もしくはリーグの収益源としてはチケット販売、スポンサー収入、放映権、グッズ販売が大きく挙げられる。このうちチケット販売とグッズ販売だけはお金をもらう相手が直接消費者=ファンとなるため、極めてB to Cのビジネスに近くなる。一方でチケット販売は試合数が制約となるが、グッズ販売であれば試合数という制約はなくなり販売機会の制約はなくなるため大きく売り上げが伸びる可能性がある分野でもある。そこでNBAがどのような特徴を持っているかを取り上げていきたい。

NBAのオンライングッズ販売のサイトはこちら↓

NBAStore.com

いくつかの切り口から見ていく。

■取り扱う商品

取り扱っている写真は下記のように多岐にわたる。

  • 定番品:ジャージー(ユニフォーム)、Tシャツ、帽子、タオルから靴下やヘッドバンドなど身に着けるもの
  • Footwear: プレイヤーモデルのシューズ
  • Collectibles:選手のサイン入りの記念品
  • DVD
  • HOME & OFFICE : iPhoneケースやヘッドホン、USBメモリなど
  • SPORTING GOODS: ボール、ゴールとバックボード、スキルアップのためのShotlocというツールなど

これを見ると商品のバラエティにも驚くが、これはNBAのライセンスの提供の仕方が非常にうまくからこそ成り立っているのだろう。

またCollegeとしてNCAAのバスケチームのグッズも扱っている。おそらくここはアフィリエイトのようなかたちになっていると考えられる。

■限定アイテム

ちょうど今はFinalをやっている時期なので、Final出場チームのカンファレンスチャンピオンの限定の商品などが作成され販売されている。限定品と来れば欲しくなるのは人の常。当然のようにそのラインナップには答えつつ、通常でも販売しているFinal出場チーム選手のジャージーなども、特集ページでは一緒に表示されている。

■カテゴライズ

画面の上部を見るとメニューがあり、そこでいろいろな商品がカテゴライズされているが、その中でも特にうまいと思ったのは以下。

  • CUSTOM SHOP: 自分の名前と背番号を入れるなどカスタマイズが可能な商品
  • PLAYER SHOPS: Playerごとの商品をまとめている
  • NBA4HER: 女性向け商品
  • KIDS: 子供向け商品(サイズ)

おそらくPLAYER SHOPからの購入が一番多いのだと想像されるが、それ以外にも女性向け・子供向けでかなり対象を広げている。実際アリーナで応援の際に切るのは男性ばかりではない。

またCUSTOM SHOPはユニフォームに自分の名前と背番号を入れられるのだが、その場でプレビューできるようになっている。この手軽さはうれしい。

■アウトレット品の販売

NBAでは選手の移籍やユニフォームのモデルチェンジによって、在庫品が残ってしまい売りにくくなる商品が出る。それをうまく販売するべくOutletというカテゴリを設けてディスカウントをした上で在庫品を販売している。(実際どの程度まで売れているかは不明)

■Gift Card& Gift Certificates

NBA Storeでは商品券(Gift Card)とオンライン専用の大量購入用の割引(Gift Certificates)を行っている。下記サイトを参照。

Gift Center

体制としてVolume Sales Department(大量購入部門)を準備し、Corperate Giftに対応できるようにしている。

■配送対象国

こちらのページで記載があるように62の国と地域が対象になっている。

NBAStore.com – International Shipping

これだけの国に配送するための物流を考えると気が遠くなりそうだが、 大手の物流会社(UPS、Fedex等)と提携しているのは間違いないだろう。

■ソーシャルメディアとの連携

NBAStoreはNBA.comとは別に、独自にTwitterとfacebookのアカウントを持っている。

NBA Store @NBASTORE

NBAStore.com facebook

ここでは主に新商品(新しいシューズなど)のニュースや、現在やっている試合に関連する商品(特にプレイオフは限定品が多い)のプロモーションを行っている。Twitterのフォロワーは約35,000人、facebookのLike!は約115,000人。facebookでの個別の投稿に関するLikeは1投稿あたり100人~300人といったところ。

# ちなみにNBA本体のアカウントはTwitterで700万人超のフォロワー、facebookのLikeは1,600万人なので人数比で1%弱がNBAStoreのアカウントをフォローしている。facebook、Twitterでも時々NBAStoreの投稿をRT、シェアしている。

正直この数字がよいのか悪いのか判断しかねるところだが、ときどきNBA本体のほうでもシェアされることを考えるとインパクトとしては悪くないのではないだろうか。

NBA.comのサイトやYoutubeでの動画再生時はかなりの確率でNBA StoreのCMが入っているため、こちらもある種既存のチャネルを活用しているといえるだろう。

■パートナーシップ

NBAStoreはShoprunnerというサイトと提携をしている。

Shoprunner

これはユーザーがShoprunnerに登録しておくと、NBAStoreでShoprunnerのロゴのついた商品については送料無料で2日以内に発送するという仕組み。(Shoprunner自体の登録に利用料は必要。最初30日はTrialのため無料)

全商品が対象ではなく、おそらく比較的在庫の確保しやすいものや製造リードタイムが短いものが対象になっていると考えられる。

■アフィリエイト

NBA Storeの商品をアフィリエイトで販売することができる。手数料率は5%。

NBA Store Affiliate Program

Affiliateの仕組みはPepperjamという会社の仕組みを使っている。

Pepperjam Exchange

■総括

NBA Storeは通常のECとして見ても商品の品揃え、物流、販売方法、プロモーション方法等、ほぼフルスペックで必要な機能を備えている充実したレベルといえる。このレベルでオンラインでのグッズ販売を実現しようと考えると、相当力を入れて業務・システムを構築する必要がある。

売上数字に関するデータが手元にないが、おそらくかなりの売上を上げていると推測される。試合という販売機会の制約を受けないビジネスとしてNBAの力の入れようが非常にわかるし、おそらく今後も重要なビジネスの柱であり続けるだろう。

[NBA] NBAの動画配信 – NBA League Pass

NBA PlayoffもいよいよFinalを残すのみとなった。

日本ではWowowとNHK BSが放送しているが、なかなか録画しておいても見るのが億劫なのでついにインターネットでの動画配信サービスであるNBA League Passを契約してしまった。

NBA League Pass

今回はこのNBA League Passに焦点を当ててみたい。

■料金体系

  • League Pass(シーズンの全部の試合を視聴可能)
  • Team Pass(特定チームの全試合を視聴可能)
  • Playoff Package(購入時点のPlayoffの残り試合が視聴可能。残り試合数により料金は変動する現在だとFinalのみで$19.99。自分が購入した際はConf.Finalからだったので$39.99だった)
  • Single Game(s)(1試合のみの購入)

当然リストの上にあるほうがカバー範囲は多く割安になるが、League Pass(シーズン全試合)はかなり高く($200程度)、自分の場合は時間の制約上そんなに試合数を見れなかったためPlayoff Packageの購入となった。(余談だが今年のConf. Finalは熱戦が続き大満足だった)

逆に言うと小さい単位で試合を購入してもらったほうが割高にはなるのだが、その分細かいアカウントごとの課金と動画配信可否の制御が必要になり、バックエンドのシステムは複雑になる。これは視聴世帯が全世界におよぶNBAのスケールメリットを考えれば十分ペイする仕組みなのだろう。

■視聴可能デバイス

現在NBA League Passは以下のデバイスで視聴可能。また国についてはいくつか制限はあるが、アメリカ国外でも視聴可能。

  • PC (watch.nba.comのサイト上)
  • スマートフォン ( NBA Game Timeというアプリを利用 )
  • タブレット ( NBA Game Timeというアプリを利用 )
  • XBox
  • Apple TV

スマートフォンでの視聴については回線速度を判断して画質をコントロールするようになっている。日本ではLTEであれば十分に高画質な画像で見れるため通勤時によく見ている(ときどき電車を乗り過ごしそうになる。) デバイスが多様化しており、情報にアクセスする際に人々の最初に見るデバイスがスマートフォン、タブレットとなっている今の時代であれば極めて正しい戦略だと考えられる。

以前取り上げたNBA Technology Summitでもデバイス戦略は大きなトピックとなっているが、そのサミットの成果を着実に取り込んでいる。

# それにしてもAppleの世界戦略はアメリカのコンテンツを世界に届けるためのものだったのではないか、と思ってしまう。たまたまNBAの世界戦略に合致するAppleのデバイスがあったということなのだろうけど。

■コンテンツ

購入した試合についてはライブ(中継)およびアーカイブ(録画)の両方が見れる。アーカイブも試合全体(Full Archive)/得点シーン中心15分程度のダイジェスト版(Condensed)を選択可能。Liveでは見れないが試合全体を見たいという人にとってはありがたい。

また動画自体も、ただ試合の映像を流すのではなくアナウンサー・コメンテーターのコメントも入っているし、アナウンサーのインタビューも入っておりTVで放映しているのと遜色ないクォリティ。(Conf. FinalはTNTが全米放送していただろうから、それと同じソースなのかもしれないが)

# ここは確認が必要だがTV局はもともと放映権の契約をする際に、League Passでの動画配信も前提に契約しているのだと思う。TV局からすると動画の視聴世帯数が広がるわけで悪い話ではない。

# 余談だがさらにいうとTV局というのはもう存在しなくて動画をコアコンテンツとして、TVにも流すしネットでも配信するというのが今のTV局なのだと考えるともはやTV局という名前自体がそぐわないのかもしれない。

またTeam Ticketであれば、アウェーであっても自分が購入したチームよりのアナウンサーの声が入っている様子(これは未確認だが後述するアンケートからそのように読み取れる)

見るデバイスによるのだが動画配信とともにLive Statsも同じ画面内で参照できるようになっていて、試合中に「LeBron調子いいな、今日難点とっているのだろう?」とスコアボードを会場で見上げる感覚でStatsを参照できる。

そう考える試合そのものの映像自体(48分間の試合時間しかない)を素材として、その素材をいかにおいしく見せるかという味付けが実に徹底されている。これももっているコンテンツ(資源)を最大限に生かすというNBAの考え方が徹底されていると考えられる。

■継続的な改善

とても感心したのは購読開始後すぐにNBA Fan Forumなるところからメールが届き、かなり詳細かつ多岐にわたるアンケートを受けた。コンテンツに関する要望、適正料金に関する意見、他のメジャースポーツの動画配信との比較等が含まれており相当専門的であることがうかがわれたのでNBA Fan Forumのサイトを確認してみたところ ↓

NBA Fan Forum powered by VisionCritical

どうやらVision Criticalオンラインリサーチ専門会社と提携して実施しているようだ。ただアンケートを取らずにその分野の最高のパートナーと手を組む。ここでもNBA自体がプラットフォームとなりうまく提携を活用していることが読み取れる。

感覚的にだがTVに文句をいうことは少なくても、ネットの動画配信サービスだったらどうも文句があればいいたくなるようなところがあり、そこを逆手にとってうまく改善につなげていこうという姿勢が見える。

■NBAの徹底力

こうやって見ていくと動画配信という一つのサービスではあるが、漫然とやらずにひとつひとつどの側面も徹底的に考えた上で提供されている。もちろん核になる価値観なりビジョンなり世界戦略があってのものではあるが、このあたりがNBAのリーグとしてのビジネス面での強さなのだろう。